合同会社(LLC)の社員退社手続き ~退社の方法は2種類~
合同会社の社員が退社するには、次のような場合があります。
<退社事由>
・持分の全部譲渡による退社
・任意退社
・法定退社事由の発生
・持分の差押債権者による退社
合同会社の社員は原則6ヶ月前までに会社に予告して事業年度の終了の時に退社することができますが、やむを得ない事由があるときは、予告をすることなくいつでも退社できます。(任意退社)
業務を執行する社員(業務執行社員)が退社した場合は、2週間以内にその変更の登記をしなければなりませんが、退社する社員が、業務執行社員でない場合は変更登記の手続きは不要です。
また、退社する社員が代表社員の場合は、新たに代表社員を決定する必要があります。
定款に代表社員の定めがなければ、業務執行社員全員が代表社員となります。
定款の定めで社員の互選により代表社員を決定する場合は、互選により新しい代表社員を定めることになります。
退社する際に問題となるのが、退社する社員の持分(出資金)をどのようにするかです。
※合同会社の社員は必ず出資を行っています。
例えば、社員2名が50万円ずつ出資して資本金100万円で設立した会社があり、1名退社する場合その者の持分50万円を1.もう1名の社員に譲渡して退社する、2.持分の払い戻しを受けて退社する場合の2通りがあります。
順に見て行きましょう。
1.持分の譲渡による退社手続きの概要
退社する社員の持分(出資額)の全部を既存社員に譲渡する形で退社する方法です。
この場合、資本金の額の減少を伴わないので資本金の価額の変更はありません。
持分を他の社員に譲渡して退社することについての社員全員の同意が必要となります。
変更手続きの流れ・フロー
1.退社の予告
↓
2.持分の譲渡に係る社員全員の同意
↓
3.本店所在地を管轄する法務局への変更登記申請
必要書類
- 変更登記申請書
- OCR用紙(登記すべき事項)
- 総社員の同意書
- 互選書(互選により代表社員を選定する場合必要)
- 定款(互選により代表社員を選定する場合必要)
必要となる登録免許税
・資本金の額が1億円以下の場合:10,000円
・資本金の額が1億円を超える場合:30,000円
2.持分の払い戻しによる退社手続きの概要
持分の払い戻しによる退社に伴い資本金の額が減少する場合は「債権者保護手続き」が必要になります。
退社時に持分の払戻しとして、多額の財産が流出すると債権者を害する恐れがあるためです。
一ヶ月以上の一定期間、資本金額の減少内容、及び、その期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告しなければなりません。
また、会社が知っている債権者に対しては公告とは別に個別に催告が必要です。
変更手続きの流れ・フロー
1.退社の予告
↓
2.持分の払戻し及び定款の変更に係る総社員の同意
↓
3.業務執行社員の決議
↓
4.資本金額減少の公告
↓
5.債権者に対する債権申出催告
↓
6.本店所在地を管轄する法務局への登記申請
必要書類
- 変更登記申請書
- OCR用紙(登記すべき事項)
- 総社員の同意書
- 業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
- 債権者保護手続に関する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書
- 互選書(互選により代表社員を選定する場合必要)
- 定款(互選により代表社員を選定する場合必要)
必要となる登録免許税
<資本金額変更>
3万円
<社員退社>
・資本金の額が1億円以下の場合:10,000円
・資本金の額が1億円を超える場合:30,000円
合同会社の社員退社の注意点
合同会社の社員が退社する場合、退社事由が発生したことによりその効力が生じますので、定款に記載された社員についての事項も退社した時に廃止したものとみなされます。
社員の加入とは異なり、定款変更の手続きを要しませんが、退社の方法によって社員の同意を得る必要があります。
退社する社員がその持ち分を他の社員に全部譲渡して退社するには、持分を譲渡することについて社員全員の承諾(同意)がなければ譲渡できませんので、譲渡について承諾したことを書面に残すことになります(定款において別に定めている場合は、その定めに従います)。
もし譲り受けた人が社員でないときは、その人は社員として加入することになりますので、定款変更についての総社員の同意が必要です。
この場合、社員の退社と加入の手続きを同時に行うことになります。
また、持分の払い戻しを受けて退社する場合は、債権者保護手続きが必要となる場合があります。
退社する社員は、出資した持分を金銭で払戻しを受けることができます。
払戻し額は社員が出資した額ではなく、退社した時の合同会社の財産の状況によって計算された額になります。
例えば、会社に利益が出ていたら出資した割合に応じて資本金額の一部を受け取ることができます。逆に債務超過である場合は払戻しを受けることはできません。
持分の払い戻しは、債権者保護の観点から剰余金額の範囲で行います。
もし剰余金額を超える額を払い戻す場合は、債権者は合同会社に対して異議を述べることができます。
また、剰余金額を超えない場合であっても資本金の額を減少するときは、債権者保護手続きが必要になりますので、注意してください。
合同会社の社員退社Q&A
Q.社員が退社した場合、必ず登記が必要ですか?
A.業務執行社員でなければ、登記手続きは不要です。
退社する社員が業務執行社員でない単なる社員であれば、氏名が登記されていませんので登記手続きは不要です。ただし、退社により資本金額が減少する場合は、資本金額の変更(減資)の登記手続きが必要です。
Q.代表社員が退社する場合、どのよな手続きが必要ですか?
A.代表社員を選び直す必要があります。
代表社員が退社する場合、残った社員が1人であればその残った社員が自動的に代表社員に就任することになります。社員が複数名いるのであれば、社員の中から改めて代表社員を選任することもできますし、全員が代表社員になることもできます。
代表社員を定款で定めている場合には、総社員の同意により定款を変更して代表社員を定めます。定款において業務執行社員の互選により代表社員を定めるとある場合は、業務執行社員の互選により代表社員を定めます。
Q.任意退社する以外にも退社事由があると聞きました。
A.合同会社には法定退社事由が決められています。
社員が自主的に退社する任意退社以外に、法律に定められた一定の事由が発生した場合に社員は退社することになります。これを法定退社といいます。
法定退社には8種類あり、次の場合に退社することになります。ただし5・6・7に掲げる事由の全部又は一部によっては退社しない旨を定款で定めることができます。
<法定退社事由>
- 定款で定めた事由が発生した場合
- 社員の退社について総社員の同意があった場合
- 社員が死亡した場合
- 合併により社員である法人が消滅した場合
- 社員が破産手続き開始の決定がされた場合
- 合同会社が解散した場合
- 社員が後見開始の審判を受けた場合
- 社員が除名された場合
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